Vol.3 Knowledge Pointに関する考察

-はじめに-

 本題に入る前に述べておかなければいけないのは、ここでいうKnowledge Point(以下KPという)とは、昨今の企業情報ポータルの一部として組み込まれるナレッジポイント(業務活動報告による情報の価値付けを行い、登録を動機付けし、共有スピードを促進する。)とは意味を異にし、その名の如く「知識点」である。
 企業価値を図る場合、長年の間、売上・生産設備・営業拠点といった有形資産と人員数・資本提携先・業務提携先などに見られる企業集団の規模感が語られてきた。しかしながら需給バランスが大きく崩れつつある(見事に崩れた)経済環境においては、有形資産が次々不良化するとともに企業の重荷になっており、必ずしもその規模感が価値判断を的確に行う材料とは、成り得なくなってきている。
 企業はよく「ヒト」「モノ」「カネ」というが、そもそも「モノ」「カネ」は「ヒト」が創り(作り、造り、以下−つくり−という)出したものである。 また「モノ」「カネ」を動かすのは「ヒト」であり、それらをいかにつくり、動かすかは「ヒト」の知識や知恵である。ここではどれが大事かという議論をするつもりはなく、あえて上述のようなロジックから「ヒト」をクローズアップさせようとするものであり、また「モノ」「カネ」をいかにつくり、動かすかの源泉である知識・知恵に着目するものである。
 企業は個々の「ヒト」の集団であり、「ヒト」に属する知識・知恵の集合である。 この集合を「知的資産」として、また利益を生み出す源泉としてKPを考察してみるものとする。

-実力を知る指標としての観点-

 「ヒト」は早ければ義務教育終了後、また ほとんどの人は成人後には社会人となり、経済活動を行うであろう。「ヒト」はそれまでに、またそれ以後の人生で得た知識・知恵というものを有しており、ゆえにはじめに述べたように企業はこの知識・知恵の集合である知的資産を有していることになる。
 企業活動は日々これらの知的資産が投じられて行われるものであるが、どのような知的資産がどれだけ投じられているのかは、果たして計られていないのではないかと想像する。(おそらく計られてはいないであろう。) 逆に考えれば、どれだけ投じられていないかも計られていないことになる。投じられていない部分については要するに人材の有効活用がなされていないことになるが、これに対する企業側のアプローチとしてよく見られる行為に、発明・発案・提案活動などを募集するものがある。なかなか集まりにくければノルマを課すようなことも行われるであろう。 実はこれはあまり有効ではないと考える。なぜなら極めて属人的なものに対する希望的観測に思えてならないからである。とはいえ私はこれらの行為を廃止すべきなどと言っているわけではなく、未活用の知的資産を把握し、具体的に企業側からそれを刺激することも同時にあってしかるべきであると考えているのである。
 少々横道に反れたが、要するに知的資産を広く様々な要素に細分化かつ数値化して、個人および企業合計として点数・分布を把握すること、またその推移を捕らえることの試みは、企業がその潜在的実力を含めた知的資産を知るための重要な行為であり、極めて貴重な情報を得られることになると考える。
 昨今、企業が、お蔵入りしている特許案件の再発掘を行っていることが新聞紙上でも話題になっているが、これも似たような行為であり、そもそもこれらも「ヒト」の知的資産によるものである

-在庫とその評価としての観点-


 財務諸表の資産の部に在庫勘定がある。これは「モノ」「カネ」であり、ある一定の周期に集計・評価して資産に計上する。これは「次繰り」ともいい、翌日からの利益の源泉である。利益の大きさは投入コストとライフサイクル(需要)で決まり、宿命的に陳腐化を伴い、時として損失を計上しなくてはならない。 知的資産を在庫に見立て、棚卸をしたことがあるだろうか? これは企業会計上の要件でもなく、おそらく ほとんど(全て?)の企業は行っていないのではないかと想像する。  当然ながらこれを行うとすれば会計上は簿外資産であるが、KPとマーケットとのマッチング度合いは在庫評価であり、陳腐化が見られるとすれば棚卸評価損はまさに、人件費効率の悪化に相当するであろう。さらに経営指標としてよく使われる在庫の回転率は、売上を生み出すスピードであるが、同時にそれも悪化しているといえる。 どんなものがどれだけマーケットと乖離しているか? ゆえにKPの棚卸および評価はまさにマーケット分析そのものであり、経営戦略の重要なパートを占めることになると考える。

-人事戦略としての観点とKPサイクル-


 前述のとおり、実力(点数・分布)と活用状況を知り、棚卸と評価を行った結果は、個々の 「ヒト」、採用計画、トレーニングなど必然的に様々な人事施策にフィードバックされ、人材の活性化が行われるであろう。さらに、棚卸し、評価し、人事施策へフィードバックするKPサイクルにより知的資産の維持、増加がなされ、それを活用、刺激することにより、人件費効率および知的資産回転率の上昇は、売上・利益を生み出すスピードをより加速させることになると考えるのである。

 これらの観点を踏まえ、具体的にどのように制度化し運営するのかは、その現実的な有効性を含め許された紙面の中では表現しきれない為本稿には記していないが、昨今の人事施策として個人の人物像を捕らえるためのEQ(Emotional Quality)という観点をいかに有効にKPに織り込むかということも私としては非常に興味深いところである。 私が知的資産としてのKPを考察するそもそもの理由は実は他にもある訳だが、それも含めてまた別の機会にお話することとし、本稿を締め括ることにする。
 最後に私のこれまでのKP考察にあたりご協力いただきました皆様に感謝いたします。


(Written by; M.S)
 Copyright (c) 2003.6.13 M.S, Keyport Solutions, Inc. All right reserved.


前回掲載分はこちら >> 「Vol.2 ワンタイム・カンパニー会計に関する一考」
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